巣鴨日記 笹川良一

 黒幕、フィクサー、はたまた日本船舶振興会のCMに出てくる爺さん。そんな怪人物・笹川良一巣鴨プリズンに戦犯として収監された昭和20,21年時の獄中日記。
 通常、獄中日記は諦観、無念、恐怖の感情が前面に出た形をとるようだが、笹川の日記は全く違う。精気に満ちた、動的日記である。
 プリズンに蠢く戦犯達の、食料をめぐる醜さ、自分が助かりたいための裏切り行為等を痛烈に批判し、「世界平和の確立」「世界一家族」の理念を実行するために、同室の若者に自分の飯を分け与えたり、看守に状況改善を直談判する。この極限状態の中で笹川の行動は、まさに博愛人道主義そのものである。この時の印象が後に釈放される者達に強烈に残り、笹川のイメージを決定的に形成したことは想像にかたくない。
 日記は、日々の記録に加えて、笹川の理念(世界平和確立、アメリカを兄に日本が弟に、打倒共産主義等)が何度も何度も繰り返し記されている。まるで「念ずれば通ず」を実践するかのごとく。
 先入観を排して読めば、無類の面白さがある傑作。大著だが、内容的に繰り返しが多いのでテンポよく読める。
巣鴨日記