借金棒引きの経済学

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 戦後の大蔵省による護送船団支配とバブル後の迷走と退場、会社に手厚く個人に薄い社会全体の利益配分の歪んだ仕組み等について、よく整理されている。中世史における徳政令と現代の債権放棄が同根であるという主張にも説得力がある。
「借金棒引き」の経済学 ―現代の徳政令 (集英社新書)
 また、中世社会における各村の独立性と訴訟による自治と責任が、これからの日本社会に必要であるという問題提起は理解できる。中央集権体制から分権体制への移行するには、まさに責任の所在の多極化と同義である。
 しかし、村の自治と現代における地方自治を比較して、巨大経済圏(首都、関西、中部等)に対する各地方の依存率が全く異なる。一国全体で稼ぎ出す利益の分配において、著しい不均衡をなしている。本来的な自給自足は成立しないなかで、富を分配し自治を行わなければならない。この問題の根本的解決なしに、分権自立社会の確立は不可能である。