パラサイト社会のゆくえ データで読み解く日本の家族

 山田昌弘著。ちくま新書。京都駅近鉄名店街の書店で購入。パラサイト社会のゆくえ (ちくま新書)
 1997発表で話題になった書「パラサイト・シングルの時代」から7年経って、当時と現在の状況の変化を、副題のとおり、各種統計や新聞記事等のデータから丹念に読み解いていく。
 著者は、特に98年が大きな転換点であるといい(98年問題と呼ぶ)、離婚、出産、教育、子供、フリーター、中高年の自殺、年金問題等について、それ以前からの質的変化について論じていく。
 パラサイトシングルを支える豊かな社会(家計)の崩壊、不安定化が98年以降で急速に起こり、もはや従来のような生活様式は成立しない。にもかかわらず、子供も大人も将来に希望を持てず、社会全体が沈滞化している。その大きな原因は、社会全体の質的変化に対して、諸々の社会・経済システムが高度経済成長期のような安定社会を前提に設計されたままであり、機能不全に陥っているからである。そうした状況に対して、著者は「努力すれば報われる社会の再興」を説く。
 結論はその通りだと思うが、それに対する具体的な対策はこのなかではほとんど示されない。特に、青少年の教育費の高騰に対する提言を示してほしかった。
 つい最近も、仕送りが減って書籍代にも事欠く大学生の実態が報道されたとおり(毎日新聞3/21等)、明らかに教育費は割高である(同時に大学がただのライセンス取得機関と化している実態も問題である)。
 著者の提唱する「努力すれば報われる社会」の根幹は教育環境の充実と機会の平等であろう。その実現に対する障害と処方箋について語ることはやはり必要ではないか。雑誌寄稿への加筆訂正を基にしたからか、主題と展開のばらつきが気になった。