既得権について

 大辞林によると、既得権とは「なんらかの法的根拠に基づき、すでに取得している権利」を指すのだそうです。
既得権を行使することで、被権利者の権利に制限をかける。巷間否定的に解釈される既得権ですが、その理由は、権力の行使において、得益以上に悪影響を及ぼすものが増加したためでしょう。
 ところで、この既得権とはやっかいなもので、社会・組織構造が複雑になるにつれその影響は広範になり、ピラミッド構造化していきました。つまり、元来外部圧力的だった既得権が、内部にも様々な形で伝播していったわけです。組織が巨大化するほどその傾向は顕著になり、意志決定を行うにあたって、内部と外部の両方を納得させなければならなくなりました。
 このような時代の変化に耐え得ない既得権は、即刻その元から潰さなければなりません。が、行動に出ようとすると、当然に抵抗にあいます。それもまず内部から、です。
 その原因は何なのでしょうか。主要因は既得権を形成する根拠・理由のブラックボックス化にあります。既得権益の形成過程における意志決定についての情報一切を、ごく一部の人間にのみアクセスできるようにすることが、まさに既得権形成への第一歩です。
 それを防ぐためには、第一に積極的な情報公開が必要です。万人にアクセスできるようにして、権力の構造、根拠をチェックする。監査等の直接行使はもちろん、衆人環視も効果的でしょう。無言の圧力です。
 第二には専門情報におけるレファレンスの充実です。情報分析の簡素化効率化です。しかし、これは諸刃の剣でもあります。というのも、そのレファレンスの作成主体が、既得権を持ちうる可能性が高いからです。
 そのため、第三に不正に対する厳罰化が必要になると思います。性善説ではなく性悪説に基づいた考え方ですが、ルール違反とそれに伴う罰則を比較衝量したときに、「割にあわない」と思わせることが肝要なのです。
 既得権との戦いは、決して政治や官僚の世界だけの話だけではありません。社会にかかわるあらゆる職業においてそれはあるのです。