価値創造の欠落 ホリエモン問題に寄せて

 アパレル業界でIT技術を使った商品管理による販売政策(QR)が曲がり角を迎えている。売れ筋情報を的確に掴むことで在庫は減ったが、消費者ニーズを後追いするだけになってしまい、売り場がそれ一色になり商品企画力が低下し、結果として顧客が離れてしまう現象がおきはじめているという(日経新聞5月18日)。
 なぜそのようなことになってしまったのか。ここで問われているのは、「価値の創造」の有無である。消費者ニーズもそれ抜きには語れない。流行とは、様々な媒体からの多数決である。決して自力で価値を作り出しているわけではない。
 ホリエモンのメディア観における違和感は、まさにこの価値の創造についてである。ユーザー(消費者)が自由に判断するのがメディアの未来像という考え方にその視点が欠落しているのである。ニーズを生み出す源泉がなければ、自分の足を食う蛸と同じになってしまう。作られる言論空間も砂上の楼閣である。
 もちろん、価値とは本質的に相対的なものであり、ネット情報が虚実ないまぜなことが問題ではなく、そこから取捨選択する自由を保障すべきだというのも一理ある。だが、それを踏まえて上で「価値の創造」がメディアには必要である。社会の木鐸とは、営々脈々と引き継がれていた伝統なり教養なりを根拠としなければならない。