ガーゴイル

 クレール・ドゥニ監督、ヴィンセント・ギャロ、ベアトリス・ダル。豪華キャストで送る吸血鬼の物語。
 社会で決して受け入れられない、抑え切れない本能を抱え苦悩する男と女が交差して語られていく。絶対的異邦人としての性癖を持ちながら優しすぎる心がとても痛い。解けないパズルにもがき苦しむ悲壮感が画面を覆う。
 見ていて、岩明均の大傑作「寄生獣」を思い出した。あちらも、人間とは別の本能を抱えながら、社会で生きていこうとする異生物の物語である。もっとも、彼らは目指したものは人間との「共存」であり「仲間」がいる。立脚点はまるで違うのだが。
 ヴェンダース「ベルリン天使の詩」の主人公は人間世界に降りることで欲望を充足したが、この物語の主人公達がそれと逆の行動を取れれば(別世界で生きることができれば)救われただろう。
 それが不可能なところに根本的に悲劇がある。
 今作でもコンビを組んだアニエス・ゴダールの映像がすばらしい。
VINCENT GALLO & BEATRICE DALLE ガーゴイル [DVD]