ドゥ・ザ・ライト・シング

 スパイク・リー監督・製作・脚本・出演。真夏日、NYの黒人街を舞台とした群像劇。人種間をめぐるちょっとしたすれ違いを嚆矢として、平和な街の歯車が狂い始め、悲しい事件が起きる。
 NYドジャースジャッキー・ロビンソンのレプリカユニフォームを着たスパイク。ランDMCの「fight power」。ブラックパワーの矜持を示し、また黒人街の矛盾も冷静に見つめている。監督はおそらくアファマーティブ・アクション問題にも関心があるのではないか。
 イタリア系、コリアン系、アイルランド系(警官)。その狭間に生まれた不寛容(イントレランス)が悲劇を連鎖増幅していく。あまりに根深いこの問題の答えを映画は用意していない。また、日本に暮らす日本人にはあまりに遠くの話でもある。ピザ屋の親父の誇りも、集団の暴力の前では無力であった。最後にあらわれるキング牧師とマルコムXの「暴力」についての相違する見解が重くのしかかる。
 「正しいことをする」ことの野蛮さは、それが正しいゆえにとめられないのかもしれない。
ドゥ・ザ・ライト・シング [DVD]