太田光・向田邦子を語る

 NHK教育22:25。このなかで、太田は向田ドラマがリアルさを失わなかったかについて、それは、ある主題についての会話の場面で、その主題のみを俎上に乗せず、横道脇道にそれながら話を進めていくところにあったからだと指摘する。
 なるほど。それこそ、多くの凡作駄作のコメディ映画と向田ドラマの超えられない壁なのだ。不自然すぎる仕草や会話。能面のような表情。ヘミングウェイ的な会話をする日本人など、向田ドラマにはでてこない。散漫な、とりとめのない会話の中に人間関係は成立するのである。
 反して、そんな誰もが日常経験する感覚に欠けた映画がなんと多いことか。お仕着せで借り物の衣装をまとった、能面顔の無国籍人間の会話に感じることなど何もありはしないのに。
 向田ドラマには、日本人を描くヒントがたくさん詰まっている。