挽歌

 五所平之助監督、久我美子主演。ラピュタ阿佐ヶ谷で鑑賞。1,200円。
 左ひじに障害をもつ主人公玲子は、ふとしたことで知り合った妻子ある男桂木に恋をする。桂木も自由奔放な彼女に次第に惹かれていく。また、桂木の妻あき子もまた医学生古瀬と逢瀬を重ねていた。。。
 戦後のアプレゲールとして自由奔放で自己主張の激しい玲子と、設計事務所を営む出世意欲の強い桂木。高峰三枝子演じる絵に描いたような貞淑なマダムあき子と、そのあき子に熱情をほとばしらせる休学中の医学生古瀬。その人物関係の対比と相似が見事であり、両者が絶妙に解け合うことで、この作品を名作たらしめている。舞台となった昭和レトロな港町釧路の風景も物語に絶妙な背景を与えている。裕福な中産階級の話に加えて、ラストの悲しみを克服していく玲子の笑顔がこの悲劇の救いになっている。
 その意味で、いわゆるメロドラマの部類に入る作品だが、同時に玲子の不倫を通した自我との葛藤と克服の物語になっている。とってつけたような奇抜な人物がバタバタやかましいだけの最近の映画とは、その人物造形センスだけでも天地の差がある。
 大満足の作品でした。古い日本映画をもっと見たい気持ちになりました。
 ちなみに、差別語として禁止されている放送禁止用語が連発されます。テレビではどうしているんだろう。。。